2021.05.20 01:59やつらの季節がやってくる/小坂ひとみ5月19日まだ5月半ばだというのに、梅雨入りしてしまった。 去年の今頃の写真を見てみると、よく晴れた写真が多く、鶏はまだ産毛がそよぐヒナだった。 鶏舎の中に生えていたセロリは香りが強すぎるのかヒナたちは無関心で、同じく鶏舎内に生えていた菜花や高菜ばかりついばんでいた。人間の分のセ...
2021.01.18 08:37冬の悩み事/小坂ひとみ1月12日とても寒い日が続いている。古い我が家は極寒で、眠るときには大きな湯たんぽが欠かせなくなった。最近は人に会うとよく「これだけ寒いと、鶏は大丈夫?」と聞かれる。それが全然大丈夫そうなのだ。いたって普通。元気いっぱい。鶏舎は冷たい風が吹き込む斜面に建っているし、全面金網張りだ...
2020.07.11 02:58在宅ひとり旅/小坂ひとみ6月21日今日は久しぶりに週に一度のアルバイトの日だった。車でバイト先に向かっていると、観光客らしき人々の姿をたくさん見かけた。なんだか懐かしささえ感じる。運転しながら横目で彼らのほうを眺める。電動自転車をこぎながら大はしゃぎするカップル、一人でもくもくと歩いていくバックパッカー...
2020.06.21 10:19この春/小坂ひとみ6月3日 春が淡々と、過ぎた。 今年の春は世界中がめまぐるしく変化していたのではないかと思う。これほど長く一人きりになって生活していた期間は、私の今までの人生をふり返ってみても、ちょっとなかった。けれど心の中はずっと落ち着かず、6月が始まった今、ようやく少しおさまったというとこ...
2020.04.30 09:03ミーコの災難/小坂ひとみ2月14日 突然ですが、我が家のメンバー「ミーコ」の紹介をさせてください。名前から予想がついた方も多いでしょうか。今年で5歳の猫です。柄は茶トラという、明るい茶色にやや濃い茶色の縞模様です。人懐っこい性格…というか、自分を人間だと思っているフシがあり、猫の友達はおらず、人間と行動...
2020.03.31 02:26サツマイモにハマる/小坂ひとみ2月9日 この冬はこれまでの人生で一番サツマイモを食べているかもしれない。 元々イモと名のつく野菜全般がもれなく好物なのだが、最近はあらゆるサツマイモを専ら焼きで食している。これが我々夫婦のほぼ毎日の日課になってしまった。 きっかけはよくある話で、「そこにストーブがあったから」。...
2017.09.01 00:05ドンドロ浜商店繁盛記8/小坂ひとみ ゆうさんが死んだのは、2016年の芸術祭の秋会期がはじまって4日目のことだ。 大きく突き出たお腹に、ギョロリとした目つき。舌はベローンと口からはみ出しのたくっている。 甲生地区に引っ越しをして初めてゆうさんを見かけたとき、正直言って怖かった。パンツ一丁の姿で手には長い銛(もり)...
2017.06.15 01:00ドンドロ浜商店繁盛記7/小坂ひとみ このウェブマガジンの立ち上げ人である平野公子さんから電話がかかってきた。 「夏にドンドロ浜商店でパトリック・ツァイの写真展をやらない?」 公子さんからのパスはいつも突然とんでくる。展覧会は小豆島で撮影されたパトリックの最新写真集の刊行に合わせて、すでに小豆島の草壁と坂手での開催...
2017.06.01 01:00ドンドロ浜商店繁盛記6/小坂ひとみ おにぎりを出す店として甲生の浜辺でドンドロ浜商店をスタートさせてはみたものの、3月も4月も5月も、なんと一年で一番混むと言われているゴールデンウィークですらも、それほど人は来なかった。行列ができたらどうしようかと随分心配してシュミレーションまでしていた2月の自分に「心配ご無用」...
2016.11.01 03:00ドンドロ浜商店繁盛記5/小坂ひとみ 2016年3月20日、ドンドロ浜商店はどうにか開店にたどりつくことができた。 「商店」と名乗っているものの品物はわずかばかりで、なぜだか「おにぎりをメインで売る店」としてスタートをきったのだった。 人にお金をもらって自分の料理を提供するということは、とても勇気がいる。私もアイち...
2016.10.04 04:00ドンドロ浜商店繁盛記4/小坂ひとみ 2015年12月、私と同居人のあいちゃんは再び引っ越しと家の改修に追われていた。「いつになったら落ち着けるの…」終わりの見えない作業に途方に暮れながら、またひとつ荷物を運び出した。 遡ること4ヶ月。2015年8月のことだった。今まで借りられる見込みがないと聞いていた家が、大家さ...
2016.09.01 08:30ドンドロ浜商店繁盛記3/小坂ひとみ 港のない甲生地区に引っ越すことになってから、迷った末に車を購入することにした。東京で暮らしていたときには車の必要性をまったく感じていなかったので、マイカーを持つだなんて考えたこともなかった。ちなみにそれまでの島内の移動手段は電動自転車か超オンボロスクーター。どちらも豊島のような...