野良の味/大塚智穂
今の時期、島の中では枇杷(びわ)がたわわに実っているのをよく見かけます。
今年は生り年(なりどし)らしく、そこらに生えている枇杷の木も鈴生りです。
『そこら』と言うのは、明らかに管理されていない野良枇杷のこと。私の地元(愛知)ではそんなに見かけることはなかったのですが、島の中では多くの野良枇杷を見かけます。
数年前、お遍路で島を歩いている時に野良枇杷をちぎって食べてみた。野良枇杷の実は小さく、皮をむくと食べるところがとても少なく、口に入れると甘みよりも酸味が強く、ふと子供の頃を思い出した。自然の中で遊び、何も考えずにそこいらに生えていた実(アケビやユスラウメ)を食べ、売られている果物とは違う味がした。味が濃いというか、強いというか、甘やかされてないぜ!という野良感。懐かしい感覚。いろんな思い出が蘇る。
島では管理されておらず、実ってもボタボタと落ちて「もったいないな…」と思っている果樹に、柑橘、枇杷、柿があります。それは完全に野良だったり、ご高齢で管理ができなくなったり、管理者が島に居なかったり。野生化している果樹はスーパーで並んでいるような甘さはありません。でも、そのワイルドさが良かったりもするのです。
先日家に帰ると門扉にビニール袋がぶら下がっていた。中を覗くと枝付きの枇杷が入っていた。どなたがくださったか分からないけれど(ありがとうございます!)初物の枇杷を頬張る。また数日後、今度は大部に住む友だちのふるちゃんが、沢山枇杷を届けてくれた。本当にありがたく嬉しいことに毎年『食べる~?』と声をかけてくれる。「大部の枇杷は美味しい!」と島の中でも一目置かれる枇杷の産地になっていて、今年の枇杷もやっぱり本当に美味しくて感激したのでした。
野生の枇杷、手をかけて育った枇杷、味は全然違うけれど、旬のものは体が喜ぶ。そんな風に感じる事が出来るようになったのも、島に来てから。
大塚 智穂
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