申年の梅干し/大塚智穂
私は梅干しが凄く好きだ。
1日1個までと決めておかないと、いくつでも食べてしまう。
愛知の実家では、毎年お婆さんが漬ける焼酎を入れた少し甘めの小粒な梅干しが食卓に並ぶ。小粒なのは、お婆さんが毎食後、お茶と一緒に食べる為だ。「緑茶と梅は薬になるからみんなも食べなさい」と言う我が家のお婆さんは90歳近い。
2012年5月。
島での生活がスタートし、島にはどんな食材があるのか、島中の野菜が集まる産直へ毎日の様に通った。産直では島で収穫された野菜や果物が袋詰めされて並んでいる。バーコードのシールには、生産者の名前がそれぞれ印字されており、6月に入ると1キロずつパッキングされた小梅や、大きなサイズの青梅が棚に並んだ。
最初の年は、食べ慣れていた小粒の青梅を買って帰り、実家から持ってきたお漬物の本を開き、初めての梅干しをドキドキしながら漬けた。出来上がった梅干しは、想像していたよりも酸っぱくて、小さな小さな梅干しになった。
あれから4年。
毎年漬け続けている梅は、産直で買っていたものから、島で出来た友人や、お世話になっている方に分けてもらえるようになり、小粒の梅から大きなサイズの梅を漬けるようになった。味の決め手となるお塩は、島で作られた御塩(ごえん)を使い、小豆島の光と風をたっぷり浴びて漬けた梅干しは、何とも言えずまろやかな梅干しに仕上がった。
今年は申年。申年の梅は薬になると聞き、10キロ以上漬けた。梅雨が明けたら沢山の梅達を天日に干してと、大仕事が待っている。
焼酎を入れて甘く仕上げるお婆さんの梅は、実家へ帰ると今でも食卓に用意されている。小豆島で出来た私の梅は、毎年実家へも持って帰り家族に食べてもらっている。今年は特別な梅干しなので、多めに送ってお婆さんに食べて貰おう。
大塚智穂
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