ぷりぷりツルツル/小坂逸雄
お盆あたりにやってきた台風が過ぎ去ると途端に秋めいてきて、海だ何だと沸き立っていた気持ちもスッと退いてしまった。干そうと思っていた梅干しも干しそびれ、8月はずっと夏なんだと思い込んでいた自分はすっかり季節に取り残されたまま早9月。未練がましく海へ行ってみると、お盆過ぎに出てくるというクラゲが浜に打ち上げられていた。生き物らしからぬ透明感と光沢。それが亡骸とは思えないほどきれいだった。クラゲには詳しくないんだけど、こいつは何ていう種類なんだ?ミズクラゲっていうやつか?身体がほぼ水分だから、生命活動を終えると溶けるようにして消えていくのか。溶けるようにだなんてちょっとうらやましいし、透け透けの身体もうらやましい。全身を通過していく太陽光線とやらも体験してみたい。ふわふわ漂いながら、時にはチクっと人を刺すなんてかっこいい。海や空の青を身体に映して、おまけに打ち上げられた砂浜を透けさせているのもかっこいい。こんな風にして何かを表現できたらさぞおもしろかろうなーだとか、ともあれそんなことを考えるのにちょうどいい季節になってきたわい。サンキュー、名も知らぬクラゲよ。さらば夏よ。
小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。
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