屋号/小坂逸雄

小豆島に来て「屋号」をよく耳にする。そしてそれが可愛らしくてたのしい。近所の漁家民泊ゲンザさんに坂手のそれに詳しい本があったので借りてみた。もちろんその「ゲンザ」というのも屋号から取って使っている。

調べてみると、苗字が使えない時代に同名の人が何人もいたら不都合が多く、苗字に代わる家の名前が不可欠だったことが屋号の生まれた理由らしい。住居の位置や付近の地物にちなんだもの、職業に由来したものなどが屋号になることが多く、その由来を調べるだけで当時の生活の息づかいが伝わってくる。だけど、屋号の呼び名だけではその由来がさっぱりわからないものも多い。ヒッツァブロヤ、ヤーヘヤ、タメハッチャ、チョヨンドンなどはどんなアクセントやイントネーションだったんだろう。字面も最近話題のポケモンGOに出てくるモンスターをも彷彿とさせる。クラシックの作曲家のような音韻に威厳も感じたりする。

こういう屋号で呼び合っていた時代はまた違った空気が島に漂っていたのだろうか。言霊という言葉もあるし、少なからず町の、島の雰囲気をつくっていった「音」ってものがあるのかもしれないなーと考えると、今、自分の目に映る光景に音楽が流れてくるようで美しい。

ちなみにボクの大家さんの屋号は「ウサギヤ」。ボクの名前、逸雄の「逸」はウサギ由来の漢字なので、なんだか親近感もあってうれしい。

(写真と本文は関係ありません)




小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。

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