本田祐也の作品整理室/小坂逸雄
この夏、「本田祐也の作品整理室」というものが設立された。このプロジェクトにボクも微力ながら協力をさせてもらえることになった。
本田祐也はボクが高校一年生の時に出会った同じクラスの同級生であり親友だ。親友だった。彼はその高校を卒業した後、何浪かして東京藝術大学の作曲科に入学し、同大学在学中にチャンチキトルネエドという奇妙な名前のバンドを結成した。1999年のことだ。
彼のことは「類い稀な才能で期待を集めるも、2004年に26歳の若さで急逝した希代のパフォーマー」と評されている。でも、ボクにとっては希代のパフォーマー云々というよりもは、後にも先にも「これまで出会った人物の中で究極にクレイジーで憎たらしくて生意気で、でも愛さずにはいられないヤツ」という存在だ。よくビリヤードをしてはお互いの勝敗に納得がいかなくて大喧嘩をした。音楽でもビリヤードでもバスケでも、彼には彼独自の美学というものがあったのだ。口論の都度、ヘリクツのようなヤツの論理に対抗していたら、自分のヘリクツにも磨きが掛かっていった。不毛とも思えるそんな時間が睡眠や食事よりも重要だった時期を、ボクは彼と連日連夜過ごした。
思い出は尽きないが、そんな彼が遺した楽曲が彼の遺族をはじめ、彼を愛しているたくさんの有志によってデジタルアーカイブ化されることになった。それが「本田祐也の作品整理室」だ。今まで眠っていた彼の楽曲が、時代や世代や国を超えて多くの人たちの目に耳に触れることになるのだ。はやくも9月には東京で「トラベルムジカ」なるイベントが催される。彼の音楽がどのような解釈で今鳴り響くのかとても興味がある。
ボクも彼が紡いだメロディーを、早くこの小豆島で、瀬戸内で鳴り響かせたいと思っている。それは決してボク個人のノスタルジーからではなく、彼の音楽には人を鼓舞させる不思議なパワーがあると信じているからだ。
「音楽は散る。オレはその続きにいる。散ってはよみがえり、散ってはよみがえる みんなに飛び散った音楽はイメエジに生まれ変わり、みんなの持つストーリーの背景になる」。十年以上も前に彼が言っていた言葉の数々が未だに胸に突き刺さっている。
小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。
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