滞在って/小坂逸雄

仕事で、とある古民家を改修した移住体験施設というものを運営している。家探しや仕事探しをするときの宿として利用してもらうことが目的だけれど、旅館業法も取得しているのでこの家をホスティングサービスのAirbnbに堂々と登録し、観光目的の方たちにも使ってもらっている。

思っていた以上に問い合わせは多い。中国、台湾、香港を筆頭に、カナダ、アメリカ、イギリス、フランスなどからもポツポツ連絡がくる。いろんな国から小豆島に向けられている視線を感じるのはたのしいし興味深い。

施設の設備は必要最小限があるだけで食事の提供はしていない。不便というよりもシンプルを極めたようなこの場所を、利用者の方は宿としてよりも滞在の拠点としてつかってくれている手応えがある。Airbnbという比較的あたらしいサービスを使うような方たちだからか、どこかフットワークも軽やかで接していて小気味よい。

3年前の瀬戸内国際芸術祭に参加したとき、毎月のように小豆島に滞在しては作品展示のためのリサーチや準備、制作をしていた。それまで長距離移動の出張はあったけど、そのときの「滞在拠点」という考え方がとても新鮮で、その後の働き方や生活に対する感覚に影響を受けた。身軽さやシンプルさが良かったのか、それが未だによくわからないけど、たぶんそんな影響もあって小豆島に来てしまったんだと思う。

この島にはもちろんふらっとやってきたつもりはない。けれども、旅と日常生活との中間に位置するような「滞在」と「拠点」という二つのキーワードが最近また気になり出している。





小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。

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