2017.07.01 13:20護摩焚き/山本貴道僕の実家は西光寺という寺の横にあった。チリンチリンとお遍路さんの鈴の音が聴こえると家を飛び出し、近所の友だちと寺へと走った。「おへんろさん。豆ちょーだい」 手を出すと、白装束お遍路さんたちが「あらっ。かわいい」と袈裟袋の中に入っているチョコや飴を僕らの手の上にのせてくれた。 小豆...
2017.03.16 06:05小豆島の山なみ/山本貴道 13年前、ガイドになろうと小豆島に帰ってきたものの、僕は島のことをあまりよく知らなかった。そもそもこの島にはガイドできるような面白いところはあるのだろうか?まずは地図を頼りに島をめぐった。 寒霞渓、オリーブ畑、お寺、農村歌舞伎舞台、棚田、醤油蔵、etc. 島の中には魅力あふれる...
2017.01.08 01:00瀬戸内カヤック横断隊/山本貴道「本日の天候は晴れ、東の風4m、午後にかけて強まる予報。満潮時刻は14時、転流は13時。転流前には瀬戸大橋を通過したい」東の空が白みかけた砂浜に海図(海の地図)を広げて十数名が輪になっている。彼らは瀬戸内カヤック横断隊。毎年初冬を迎える11月半ばにカヤックを漕いで瀬戸内海を横断し...
2016.10.03 10:00あの橋の向こうへ その2/山本貴道 サクッ、サクッと砂浜を歩く気配で目が覚める。といっても、テントの外はまだ薄ら明るい程度。シュラフを頭からかぶりもう一度眠りにつこうとすると「やまちゃん。すごいよ!」外からふくちゃんの声がした。ジッパーを開き顔を出すと「おー!」真っ赤な太陽が瀬戸大橋を昇っていた。 6月3日。今日...
2016.07.31 02:00あの橋の向こうへ/山本貴道 太陽の熱を帯び、いまだ温かい防波堤の上に座り、冷えたビールをグラスに注ぐ。目の前にはピンクに染まる夕凪の海が広がり、空は徐々にオレンジから藍色へと変わり始めている。昼と夜の境界線がとけあい、ゆるやかな島の時間がさらにゆっくりと流れていく。男木島の灯台が点滅をはじめ、遠くに瀬戸大...
2016.06.25 00:40カヤック海旅/山本貴道僕は大学卒業後、都庁職員として東京から1000㎞南、小笠原諸島父島にある小笠原水産センターで魚介類の研究員として働いていた。僕がカヤックに初めて出会ったのはその父島の海だ。見渡す限りの水平線の向こうに浮かぶ真っ白な入道雲、澄みきった海を泳ぐ色とりどりの魚たち、そしてまさに今そこで...