嬉しい楽しい美味しい/大塚智穂
この週末、母と2泊3日の旅へ出ました。
広島で幼少期を過ごし、小学生の時に愛知に移り住んだ母には、広島の呉や山口県の特牛(こっとい)や玖珂におじやおば、いとこがいます。普段みんなと会うことが出来ないけれど、子供の頃にお世話になったと言っては、なにかにつけて豆腐やお惣菜を送ったりしています。
母も歳をとり、みんなも歳をとり、なかなか会えないけれどみんなが元気な内に会いに行かなくちゃ!!!と言うことで私に声がかかり、新幹線のチケットやらレンタカーの手配、宿の予約、そしてお供をすることに。私が山口県の特牛を訪れたのは今回で4回目。車に乗って、のんびり景色を楽しみつつ、あ!覚えてる!という景色もチラホラあったりして。田舎の景色を十分に満足出来るほど車に乗ってようやく特牛へ到着。
特牛には母のいとこ(85歳)のおばちゃんがいます。旦那さんになるおじちゃんは病気をしてから家と施設を行き来しているそうで、おばちゃんは1人でおじちゃんのお世話をしています。おばちゃん達は子供に恵まれませんでした。広島の呉でおじちゃんと2人で商店を切り盛りし、朝早くから遅い時は夜中の2時まで。仕事仕事でやってきたお2人は歳を取ってからおじちゃんの生まれ故郷の特牛へ移り住んだそうです。おばちゃんは御年85歳ですが、動きが只者ではない。おじちゃんのお見舞いの準備を見ていて、さすが、働き切った人の動きは違うなあと本当に驚いたと同時に「こりゃあ、かなわないなぁ」と思ったのでした。
おばちゃんをピックアップしておじちゃんのお見舞いの後、車でさらに1時間、長門湯本の温泉宿へ到着。今回はおばちゃんと母と私の3人で、宿に1泊することにしていました。宿は古くて雰囲気があり、早速おばちゃんと温泉に入る。おばちゃんは「本当に気持ちがええっちゃね~!」とすごく嬉しそう。たっぷり温泉につかって、浴衣に着替えて夕食になりました。
おばちゃんは毎日ビールを1缶空けるそうなので、瓶ビールを1本オーダー。私と母は普段からお酒を呑むことはないのですが、おばちゃんがせっかくだから手伝って!と一口分ずつグラスに注ぎ、3人で乾杯して夕食がスタートしたのでした。
新鮮なお魚や手の込んだお料理はとても美味しくて、おばちゃんは「はぁ~!本当に美味しい!ビールもよ~冷えちょってね!みんなで食べるごはんは本当に美味しい!美味しい美味しい!!!」と何度も何度も嬉しそうに言っていた。おじちゃんが不在のときはいつも1人でごはんを食べているおばちゃん。本当に嬉しそうで、色んな話をしてくれながらも、「美味しい!美味しいねえ!」と言っている姿をみると、私と母も嬉しくて、来てよかったなあと思うのでした。私は普段全く飲まない苦手なビールも、おばちゃんがあんまりにも美味しそうに飲み進めていくので、グラスに注いだ一口分のビールだったけれど、不思議ととても美味しく感じたのでした。私も久しぶりの旅行だし、坐っていても出て来るごはんも嬉しくて、でも、このビールと夕食の美味しさはそれだけじゃない何かが効いている。
久しぶりの母ちゃんとの旅行。久しぶりに会えたおばちゃんのそれはそれは嬉しそうな顔。大切な人たちと過すと、美味しい食事が何倍にもなるんだと、改めて実感できたのでした。
翌日おばちゃんの家まで戻り「必ずまた来るから、その時も一緒に温泉へ行こうね!元気でいてよ!」と、私と母は車に乗り込む。「行こうね!」とおばちゃん。おばちゃんも私達も、お互いが見えなくなるまで手を降ってお別れしたのでした。
大塚 智穂
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