いつもの/小坂逸雄
この季節の恒例行事となったシイタケの原木切りに行ってきた。と言っても今回でまだ3回目。チェーンソーの扱いについてはそんなに経験を積んでいるわけでもないのに、大家のじいさんはアレとアレとアレを切ってくれとボクに指示を出す。それはまるでいつもの喫茶店で「いつもの」と注文をするような流れだった。
そんなじいさんの感覚とは裏腹に、この日は新米の木こり(ボク)にとってはなかなかハードな一日となった。一本目は風に煽られた木が電線に引っかかりあわや大惨事になるところだったし、二本目はそれを教訓にとロープで木とくくって引っ張り目的の方向に倒すという措置をしたにもかかわらず、そのロープを引っ張るじいさんに向かって木が倒れていき直撃しそうになったし。
木の生え方や風向き、倒す方向については実は作業開始前になんとなく嫌な予感はしていた。そして実際に切ってみたらやっぱり思った通りの結果になってしまったというのが残念だった。新米とはいえ、この勘が当たっていたことは今後の自信にしてもいいとは思うけど、それにしてもあまり気分の良いことではない。でもじいさんはそれらのアクシデントをボクのせいにするでもなく、ガハハと笑ってやってのけた。さすがだ。
ともあれじいさんが無事でよかった。そしてじいさんが切りたかった木が予定通りに切り倒せてよかった。ボクにとっては不本意な日だったけど、それが別の誰かにとっては本意な日になるということもあるみたいだ。何が良かったのかはわからないけど、じいさんが満足ならそれでいいやと思った。
来月はこの切り倒した木を細かく切ってシイタケの原木を作り、菌を埋め込みます。
小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。
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