その目線の先。ビーフン。/小坂逸雄

台湾は桃園空港に到着したのは日本時間の22時近く。さすがに甲賀さんの足元もフラついていたので、入国審査後すぐに空港内のカフェでお茶をすすりながらひと休みした。空港内とはいえ小豆島とは違う湿度を経由して台湾のガチャガチャしたムードが伝わってくる。疲れも相まって興奮してきた。心身を台湾用に調律するかのように小一時間ほど休憩をした後、タクシーで宿へと向かう。タクシーは平均時速120kmを軽く超える快走で高速道路を滑走してくれた。台湾のタクシーはドライバーの“らしさ”がたのしめるひとつのアトラクションだと再確認した。運賃も安いしこんな調子にたのしい。このエンターテイメント性の高さよ(!)。人の目を盗むようにしながら、夜の台湾に滑り込む。甲賀さんは悪巧みでもあるかのような眼差しで窓の外を眺めていた。たのしそうなことが起こりそうだ。ボクは異国の夜景をたのしむことができないくらい落ち着かなかった。

入国のとき、空港のどこかの列に並んでいると甲賀さんが「ここでいきなり走り出したら、ここにいるヤツらみんなこっちを見るぞ」とか、そんなようなことを口にした。十徳ナイフ事件の確信犯よろしいご発言である。そんな発言に親近感を持ちつつ、甲賀さんのこの展覧会への意気込みを見せつけられる。展覧会を日本ではなく台湾からはじめる、ということもそんな発想の持ち主だからかもしれない。なにが起こるかわからないけどなにかが起こるに違いないという、根拠があるとは言い難い確信はボクも常に持ち合わせているつもりだ。きっと台湾の人たちも、そんな事故的な出来事を待っている気がするし、日本の人たちもまた「なんで台湾なの?」という意外性に甲賀さんのおもしろさを感じるに違いなかろう。

口数は少ない車内だったけど、たまに口を開くと「ビーフンが食べたいなぁ」とか食べ物のことを言っている。このお方はいったい何を考えているんだろう。あまり深く考えずに「あぁ。それ、うまいっすよ」だのと適当な相づちを打ちながら、宿には日本時間の0時くらいに到着した。


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『平野甲賀の描き文字展  小豆島から台湾へ』

装丁家の平野甲賀さんが小豆島に来てから毎日写経のように制作していた作品が、いよいよ各地へと飛び出します。展示第一弾は日本のお隣の漢字の国、台湾(台中)からスタートです。よく知られた本の装丁からマニアックな舞台公演まで、これまで平野甲賀さんが手掛けてきた名作珍作がボリューム満点の70点超で大放出。ぜひこの機会にご来場をお待ちしています!(作品はすべて台湾展特別価格 - 約3万円 - で販売しています)

会期 / 開催中! 〜 5月14日(日)※火・水休

時間 / 14:00 – 19:00

場所 / 綠光+marüte(台中市西區中興一巷2號)

入場 / 無料

お問い合わせ / その船にのって(donburako@sonofune.net / 担当:小坂)

日本語のイベントページはこちら → https://www.facebook.com/events/628047734035005/

台湾語のイベントページはこちら → https://www.facebook.com/events/387566861596317/



小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。

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