ということで、栗が好きです。/小坂逸雄

 このコラムで記事を書いている大塚智穂さんちに遊びにいくと、智穂さんは栗の渋皮を剥いている最中だった。作業をしているその横で先日の東京国際ブックフェアでのお話や東京で感じたこと、思ったことをブツブツと勝手に話をする。

 ボクが話をしている横で智穂さんは相槌を打ちながらせっせと手を動かしている。味見させてくれた剥いたばかりの栗は、季節が確実に秋へと移ろっていることを目の当たりにさせる味だった。眠っていた記憶を呼び起こさせるようなやさしい甘さを確かめながら、スルスルと気持ちよく剥かれていく渋皮と露わになっていく栗の姿に、ブックフェアに登壇する前と後で感じた自分の心境の変化を重ねながら眺める。

 味や季節や心境など、体感する速度が違う感覚が一気にやってきて戸惑いそうになったけど、不思議とそれらが絶妙なバランスで調和しているようにも感じた。変化というところが一致していただけなのかもしれないけど、栗の味そのものがその全部を説明してくれているようで心強い。

 小豆島、というか、この「その船にのって」はそんな秋が真っ只中です。




小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。

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