ミーコの災難/小坂ひとみ
2月14日
突然ですが、我が家のメンバー「ミーコ」の紹介をさせてください。名前から予想がついた方も多いでしょうか。今年で5歳の猫です。柄は茶トラという、明るい茶色にやや濃い茶色の縞模様です。人懐っこい性格…というか、自分を人間だと思っているフシがあり、猫の友達はおらず、人間と行動を共にしたがります。そんなミーコさんに降りかかった災難のお話。
2月10日の早朝、我々夫婦は夫の実家である東京に帰省するために、小豆島の自宅を出発した。帰宅するのは2月13日の夜10時頃、丸4日後である。ミーコは家で留守番。普段から猫専用扉を使って自由に外に出たり、帰ってきたりしているので、エサと水を4日分用意して出かけた。
いつも少し不安はよぎる。
「ごはんは足りるかな」
「トイレ失敗しないかな」
「トラブルに遭ったりしないよね…?」
東京で親戚に会ったり、混み合った電車にグッタリしたりと、都会を満喫。予定通りの船に乗って、愛猫の待つ島へ帰った。
しかし、ミーコはいなくなっていた。代わりに家の中にいたのは、巨大なオス猫「マスク」だった…!
名前で予想がついた方もいるかもしれない。顔に仮面のような模様があるので、「マスク」と呼んでいる。最近ミーコにつきまとっている近所の猫だ。飼い猫かどうかは不明だが、まるまると肥えているので食うに困っていることはなさそうに見える。そのマスクが、しれっと我が家で生活をしていた。エサはすっかり空だった。マスクは太いから猫扉を通れるはずがないと油断したことを悔いた。
自宅の周辺をミーコを呼びながら探したが気配はない。重い空気の中、夫とこれからのことを相談し、私達は口数少なくその晩をやり過ごした。すっかり夜は更けきって、集落はとても暗く静かだった。
翌朝になってもミーコは帰らない。保健所に問い合わせるとき、緊張で喉が乾いた。もし不明猫の情報があったとしても、生きている場合とそうでない場合があるから。
生きている猫のピンとはった毛並、力強い爪の先、顔をうずめたときのいい匂い、最高。毎日見ていても変わらぬ熱量で最高なのだ。それが失われてしまうかもしれないと思うと、堪らない。生きなくなった猫の体は、とてもとても悲しい。その固さと体温を知っている。
一番起きてほしくないケースまで想像し、沈むだけ沈んだ頃に、ミーコを発見!不運が重なって、無人の民家に閉じ込められていたのだ。少し痩せてしまったミーコは、しかしすぐに調子を取り戻し、今日も凶暴かつキュートに生きている。猫がいる日常は愛おしい。
ちゃっかり者の太猫「マスク」もまた、たまに我が家に遊びに来ている。
小坂ひとみ
1986年生まれ。2012年に東京から瀬戸内海の豊島に移住。
現在は小豆島在住。夫と猫とともに暮らしている。
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