奇跡の食べ物/大塚智穂

私の好きな食べ物の1つに「梅干し」がある。

子供の頃は、毎年お婆さんが漬けている梅を食べていた。お婆さんの「梅干し」は焼酎を入れるため、甘さと酸っぱさとを感じる小梅だ。お婆さんは毎食後その小梅と熱い緑茶を必ずすすり、90歳を過ぎた今でも医者いらずでピンシャンしている。私は小さな「梅干し」1つでは満足できず、数粒まとめて食べていた。おかゆ、おにぎり、お茶漬け、うどん、チャーハン、とにかく何にでも「梅干し」を添えていた気がする。

2012年に島に来てからは、自分で梅を漬けることにした。手初めに産直に並んでいた小梅を買い込み、お漬物の本を読んでその通りに作ると、ちゃんと「梅干し」が完成した。これに味をしめ、『梅仕事』は毎年恒例となった。『梅仕事』というと聞こえが良いが、私の場合ある種の病気じゃないかと思っている。この時期になると家の回りに植えられている梅の木を散歩のたびにチェックしたりして、梅の成長具合を確認しておく。そして梅が大きくなってくると、取り憑かれたようにソワソワしてくる。

今年もすでに3キロ(産直で購入した梅+伯方の塩)、6キロ(HOMEMAKERSさんの梅+伯方の塩)、3キロ(HOMEMAKERSさんの梅+御塩のプレミアム梅干し)、2キロ(HOMEMAKERSさんの梅+甜菜糖)でシロップをするべく漬け込んだ。まだだ…まだ、足らない。実家に送ったり、自分が毎日惜しみなく食べるためには、まだまだ足らない。というわけで、ニンニクでお世話になった農家さんが梅も収穫すると聞きつけ、「5キロでも10キロでもわけてください!」と伝えておいた。何キロ来るのか分らないが到着次第漬け込んでしまわなくては。

木に実っている青梅はそのままでは食べられない。梅と塩と赤しそだけで、あんな美味しいものが手軽に作れ、しかも、何十年おいても腐ることなく保存が効く。最初に「梅干し」を作って、その作り方を広めてくれた人にお礼を言いたい。あなたの作った「梅干し」は奇跡の食べ物ですよと。

大塚 智穂

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