もちもちもちその2/大塚智穂

お餅にはいろいろな食べ方があります。

なかでも『お雑煮』は全国各地で食べ方が異なります。

私の実家は愛知県です。私が子供の頃から食べていたお雑煮は、お醤油ベースの鰹出汁に角切り餅をそのまま入れてやわらかくなるまでコトコトします。盛り付ける直前に、お正月シーズンだけお目見えするもち菜(小松菜に似てる)を入れてひと煮立ち。器にお餅、もち菜、お出汁をよそい、花かつおを盛りつけて出来上がり。とってもシンプルなお雑煮です。※私はお餅がやわらかくなりすぎるまでお鍋でコトコトさせます。花かつおと出汁がしっかりからむので特に好きな食べ方です。

小豆島に来たばかりの頃は、小豆島のお雑煮はどんなものなのか聞いてまわると、おすましだったり白味噌ベースのお雑煮だったりと、各家庭で異なり、小豆島のお雑煮はコレ!というものはなさそうでした。

ところが、同じ香川県の高松や他の一部エリアでは珍しいお雑煮があります。それは、白味噌ベースのあん餅雑煮。しかも、あん餅というのは甘いあんこを餅で包んだ丸餅のこと。これを初めて聞いた時は、「へ!?白味噌にあんこ餅?」とかなり驚きました。そして、いつか本場の「あん餅雑煮」を食べてみたいと思ったのでした。

移住して数年後、高松出身(あん餅雑煮エリア)の方が作る、念願の「あん餅雑煮」を食べさせていただける機会に恵まれた。ワクワクしながら食卓で待っていると、由来についても話をしてくださいました。

その昔、高松藩は藩をゆたかにするために、塩、砂糖、木綿の特産品を奨励していた(讃岐三白)。庶民は藩に納めるために作っている砂糖を、自分たちのためにも少しずつとっておき、お正月には1年間大切に貯めておいた砂糖で餡を炊いて、おおっぴらに食べられないからと餅で包んであん餅にして、それを雑煮の餅としていれて食べたのがはじまり、ということだった。雑煮一つでここまでのストーリーがあるとは衝撃だった。

しばらくすると目の前に椀が置かれた。白味噌ベースのお汁に丸いあん餅。輪切りの金時人参と丸いままの里芋、青のりが浮かぶ。輪切りの金時人参や丸のままの里芋は「今年一年丸く収まりますように」という願いがこめられているそうだ。初めて目にするお雑煮はそれはそれはとても綺麗で、由来を聞いたこともあって『食べるのがもったいない』という気持にすらなった。

ひとくち。

白味噌ベースのお出汁が丁寧に作れられているのがわかる。絶妙な塩梅で「上品!」

ひとくち。

「おお!やっぱり甘い餡だ!」

ひとくち。

甘いとしょっぱいが絶妙な塩梅。あん餅一口に対して、お汁二口くらいのペースで食べ進めるくらいが丁度良い。

あん餅雑煮、最後まで美味しくいただくことが出来ました。

おせちもそうだけど、素材に想いをのせて、食べさせたい人を想い調理する。食べ物一つ一つに想いを込めて作るという日本の文化って素晴らしい。改めてそう思ったお雑煮でした。

大塚 智穂

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