母ちゃんのオムライス/大塚智穂

オリーブ収穫に行っていた数日間は、自分でお昼ごはんを持って行っていた。

初日はサンドイッチ、2日目はおにぎり、3日目は前夜のおかずの残りをタッパーに入れてみたりと、自分が食べるお弁当なので手を抜いていたが、外で食べる気持ち良さに気が付いて、残りの数日はちゃんとした「お弁当」を作ることにした。いざ「お弁当」を作って持っていくと、お昼休憩がとても待ち遠しくなって、オリーブを収穫する手にも力が入る。

「そろそろ、おかんか~!!!」

この、「おかんか」という表現は小豆島で初めて聞いたのだけれど、きっと「置かんか」→「手をとめて休みましょう」ということなんだろうなと勝手に理解した。今度聞いてみよう。ちょっと年配な方々と一緒に仕事をする機会があると、聞きなれない小豆島弁が日常的に使われるので楽しい。

いよいよ待ちに待ったお昼ごはん。心地の良いオリーブの丘でお弁当を広げた。

その日のお弁当は、朝作っておいた「オムライス弁当」だった。

玉ねぎとピーマンをみじん切りにしてさっと炒め、ごはんと一緒に炒める。塩とコショウ、ケチャップを入れてケチャップライスを作る。少しお砂糖をいれて薄焼きにした卵をケチャップライスの上にかぶせて、最後にケチャップをかけただけのとてもシンプルなオムライス。

一口食べる。

うん、オムライスだ。

もう一口食べる。

自分で作ったものだけど、うん、美味しい。

もう一口食べる。

…なんだか、懐かしい味がする。

食べ進めていくと、私が作ったオムライス弁当は『母ちゃんが作ってくれていたオムライス弁当』だったことに気が付いた。そう、これは『母ちゃんが作ってくれていたオムライス弁当』の味。私は母ちゃんが私のために作ってくれていたオムライス弁当を作っていたのだ。

母ちゃんが作るお弁当は茶色かった。

野菜が好きな私の為にせっせと作ってくれたお弁当は、冷凍食品を使うことはほとんどなく、キヌサヤの卵とじとか、野菜のタップリ入った炒めしとか、オムライス弁当とか。そうそう、私が梅干しが大好きなことを知っているのでいつも大きな梅干しを入れてくれていたな。

私の作るごはんの基本は母ちゃんの味だ。

子供の頃に食べていた物が基準になっている。

子供の頃に何を食べていたのかって、とても大切な事なんだな。

いろんなことを考えながら『母ちゃんが作ってくれていたオムライス弁当』を食べ終えた。

大塚 智穂

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