節分と鬼と相対性理論/小坂逸雄
ここ数日続いているボクが勤めるNPOが運営しているシェアハウスの改装工事(自力)をしているときの話。今日も床を見つめながらクッションフロアを貼る作業を黙々としていたときのことだ。お昼のチャイムも鳴ったので、そろそろ休憩にしようかとキリのいいところを探しながら作業をしていると、そのシェアハウスのおかみさんの「小坂さーん、お客さんだよー」という声が玄関から聞こえた。はて誰だろうと思って玄関に行ってみると、そこにはちょうど一年前のこの日、小豆島へと移住してきたご夫婦が不審な笑顔をして立っていたのだった。ははーん、と思うや否や、そのご夫婦の息子ちゃんが作ったという鬼のお面を被せられ、すかさず豆の集中砲火を受けた。うっかりしてたけど今日は節分だった。うっかりしている隙に自分が鬼に設定されているのには驚いたけど、でもとてもたのしかったしうれしかった。鬼の役をやっているうちにだんだんと「鬼はお前らの方じゃねぇか」とも思えてきた。これはきっと俗に言う相対性理論である。こっちの言い分や立場があればあっちの言い分や立場ももちろんあるのだ。福は内、鬼は外と言われていると不思議と確かに鬼はボク自信のことだったのかもしれないなと思えてきた。節分、豆まき。先人たちのすばらしい知恵と悪霊ばらいである。一汗かいてしまいそうな一戦を繰り広げた後、その家族はサラッと爽やかに帰っていった。思わぬ爽やかな節分はまるで春そのもののようで、なんというかまぁ、晴れ晴れとした一日だった。いただいた豆をポリポリと食べながらボクもそんな爽やかな振る舞いができるようになりたいと思った一日。なんともありがたい一日でした。
小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。
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