冬の悩み事/小坂ひとみ


1月12日


とても寒い日が続いている。
古い我が家は極寒で、眠るときには大きな湯たんぽが欠かせなくなった。


最近は人に会うとよく「これだけ寒いと、鶏は大丈夫?」と聞かれる。
それが全然大丈夫そうなのだ。いたって普通。元気いっぱい。
鶏舎は冷たい風が吹き込む斜面に建っているし、全面金網張りだから身を隠す場所もほとんどない。外気温が氷点下にもなってしまうと、さすがに鶏たちにも寒さ対策を考えなくちゃいけないかもと覚悟していたけれど、必要なさそうだ。
そういえば、野生の鳥は冬だろうと外で活動できている。家畜化されているとはいえ、鶏だってホコホコのダウンを身にまとっているわけだし、逞しいはずだった。飼ってみるまで気が付かなかったけれど。

逆に暑いのは辛そうだった。去年の夏は過酷だったので、日中は鶏も人間もぐったりしていた。飲み水は朝たっぷり与えても午後にはほぼなくなってしまい、午後のエサやりの時間にまたたっぷり追加。朝の涼しい時間に鶏舎に水撒きもしたが、一番暑い昼過ぎから夕方までの時間帯は、羽を開いて脇から体温を下げようとしている鶏も何羽かいてハラハラした。全員無事で秋を迎えられて本当によかったけれど、こんな暑さがこれからの夏にも待っているのなら、備えが必要かもしれないなぁ。けれど今は目の前の寒さでうまく想像ができない。

冬の鶏仕事での一番の悩み事といえば、雑草が見つからない!!ということだ。
自然卵養鶏の大きなポイントともいえる新鮮な緑餌。主食は穀類とヌカ類を原料にした発酵飼料だが、鶏の健康には毎日食べたいだけ食べられる草があるほうが良い。とはいえ、いくらでも食べ尽くしてしまうので食べたいだけの量を与えるのは不可能に近く、毎日1羽につき少なくとも100グラム、20羽いるので最低でも2キロの緑餌を目標に草をかき集めてきた。この冬までにも何度かピンチはあったけれど、その度に近所の人に尋ねたりしながら、使われていない畑で雑草を刈らせてもらって凌いできた。
緑餌の足しにしたくて多めに畑に植えた各種野菜は失敗ばかりで、人間の口に入る分すら収穫できていない。


けれど、ご近所さんたちは野菜作りがとても上手なのだった。草を求めて目をギラつかせていると、畑に無造作に捨てててある野菜の外葉たち。今まで挨拶を交わす程度の交流しかなかったけれど、思いきって作業している人に「これ、いただけませんか」と声をかけた。みなさん快く応じてくれた。虫喰いの白菜、レタスの外葉、大根の葉っぱ、取り終えたカリフラワーの株…などなど。本当に助かった。
「捨てるだけのものだからコッチも助かる」なんてことも言ってもらえ、人間用の野菜もオマケでいただいちゃったりも。Sサイズにも満たない小さな卵(産み始めて間もない鶏がよく産みます)があるときには、お礼としてお渡ししたりもするのだが、とても喜んでもらえて私も嬉しい。聞けば昔自分の家でも鶏を飼っていたという方が思いのほか多く、産みたての卵には懐かしさもあるようだ。300羽以上も家業として飼育していたという方もいて驚いた。小学生の頃、親の手伝いで卵の配達を自転車でしていたそうだ。現在は100羽を超える規模の養鶏場がひとつもない小豆島だが、少し遡れば鶏が今よりも身近な生活があったのだ。


周りの人たちに助けてもらいながらどうにか今日までのところ緑餌をまかなえてきたが、春になるまで綱渡り状態が続くと思うので、雑草情報&クズ野菜情報は随時募集中です。
今年は自分の畑も改善したい!




雑草を採らせてもらっている畑から。うちの畑よりもずっと高いところにあり、坂手の集落と港がよく見える。

数日前の寒すぎる日。いつもの水入れの中が分厚く凍っていた。



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小坂ひとみ
1986年生まれ。2012年に東京から瀬戸内海の豊島に移住。現在は小豆島在住。夫と猫とともに暮らしている。

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