2016.07.03 10:13私的皮革的覚書 2 / 内澤旬子 今ならそこまで衝撃を受けた本なら間違いなく購入するだろう。しかし当時の私には大型本を買うお金もないし、タイトルさえわかれば新刊どころか古書もすぐに探し出すことができ、価格を問わなければ三日後には手元に届く、という時代でもなかった。 それになにより一度読めば十分だったのだ。だって...
2016.07.03 10:01私的皮革的覚書 1 /内澤旬子生乾きの鹿の毛皮の周囲に、彫刻刀でポツポツと穴を開ける。ナイロンの紐の先を焼いて固くして、穴に通して通しては、枠に巻き付けていく。一週間ほどミョウバンの溶液に漬けた毛皮は、わずかに生臭さが残るものの、このまま放置してもすぐに腐敗はしない、なにかに変容している。そんな匂い。皮から革...